「よろしくお願いします」の使い方
よろしくお願いします、とは?
ある日、7歳の子どもを持つ日本人の友人から「娘が通っている英会話学校の先生に『娘をよろしくお願いします』って言いたかったんだけど、英語で何て言えばよかったのかな?」という質問を受けました。
みなさんだったら、何と答えますか?
私は英語には『よろしくお願いします』の直訳はない、と言ってしまったんですが。友人が先生に伝えたかったことは要するに「娘の英語が上達するように、熱烈かつ愛情をもった指導をお願いします」という期待だったとは思うんですが。
「よろしくお願いします」は場面によって、いろんな意味があると思います。いくつか使用例を見てみましょう。
<初対面の人と>
A: はじめまして。佐藤です。
B: ルイです。よろしくお願いします。
A: こちらこそ、よろしくお願いします。
A: Hi,my name is Sato.
B: My name is Louise. Nice to meet you.
A: Nice to meet you too.
ここでは、「会えてうれしい」という、あいさつとしての機能。どの言語にも同様の場面はあるので、そんなに翻訳は難しくないし、これは日本語を学び始めた人が最初に覚える表現の一つかもしれません。
では、次はどうでしょうか。
<会議や共同で作業をはじめるとき>
A:みなさん、おそろいですか?
B:はい、だいじょうぶそうです。
A:それでは、さっそく始めましょう。今日はよろしくお願いします。
A: Is everyone here?
B: Yes, it seems like it.
A: Well then, let’s begin. Today, yoroshiku onegaishimasu.
ここでの意図は、「一緒にがんばりましょう」という激励や「大切な時間をありがとう」という謝辞と、とらえることもできます。また、何があっても「大目にみてください」という事前のエクスキューズのようにも聞こえます。
<メールで>
添付書類をご確認の上、何かご質問がございましたら、ご連絡ください。
以上よろしくお願いします。
<宣伝>
新曲が7/7に発売されます。みなさん、よろしくお願いします!
The new single will go on sale July 7th.
Everyone, yoroshiku onegaishimasu!
手紙では「敬具」などのようなクロージングの定型句ではありますが、「次はあなたがアクションをする番ですよ」という催促も含意されていると思います。同じく<宣伝>の場合は、明らかに「買ってください!」の意味ですよね。
このように「よろしくお願いします」の意訳は多岐にわたるのですが、このフレーズを理解するのに大事なことは、既に終わった行為についてではなく、未来に起こりうることに対するお礼や謝罪、弁解などの意味があるということ。まだ起きてもいないことにたいして、「ありがとう」「ごめんなさい」を言っておくのが、その大事な機能だということなんです。
いずれにせよ、「よろしくお願いします」会話や文章を終わらせるのに大変便利な言葉です。これからは、どんな場面や会話で使われているか、よく観察してみてください。そして、どういう意図や意味を持って使われたのかわからない場合は、ぜひご報告を「よろしくお願いします」!